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【無料公開】書籍「13歳からの進路相談」1日目/進路選びの軸を見つける3つのステップ

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サイル学院高等部 学院長・松下雅征の著書「13歳からの進路相談」シリーズ第2弾となる『13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)』が、2025年4月に発売されます。

出版を記念して、前作『13歳からの進路相談(すばる舎)』の一部「1日目/進路選びの軸を見つける3つのステップ」を無料公開!

「13歳からの進路相談」シリーズは、全国の学校や市区町村の図書館で多数採用されている進路選択・キャリアの入門書。自分らしい人生をつくるヒントがたくさん詰まった一冊です。

これから進路を考える方から、お子様を持つ保護者の方、自分のキャリアを見直したい大人まで。この機会に、ぜひご一読ください。

ご購入は記事末尾の各販売サイトからどうぞ。

進路選びの軸って何?

ヒカリの講義1日目。シンとミクは隣同士デスクを挟んでヒカリと向かいあうように座っていた。ミクが楽し気な表情なのに対して、シンの表情はこわばっていた。

ミクは中学1年生だが、シンは中学3年生。高校選びに残された時間は少ない。この講義の内容で自分の進路が決まるかもしれないと考えると、講義前から少し緊張していた。

「さっそくだけど、2人に質問。進路選びの軸を見つける目的が『自分にあった進路を選ぶこと』とすると、自分にあった進路を選べている状態って、最終的にはどういうことだと思う?」

「自分が楽しいことを仕事にしている......とかですか?」

シンは首を傾げながら答えた。

「楽しいことをしていても、お金が稼げないと私は嫌!大人になったら好きなものは我慢せずに買いたいし、私はお金が稼げる仕事がいいなー」

ミクが熱を込めて言った。

「そうね、シンくんの言う『自分が楽しいこと』も、ミクちゃんの言う『お金が稼げること』も、自分にあった進路選びには欠かせない。何を楽しいと感じるかは人それぞれだし、どのくらいのお金を稼ぎたいかも人それぞれ。だけど、自分が楽しいことをしたい気持ちと、自分にとって十分なお金を稼ぎたい気持ち。多かれ少なかれ、みんな両方の気持ちを持っているんじゃないかな」

ヒカリの発言にシンとミクはうなずいた。

2人のうなずきを確認すると、ヒカリはホワイトボードに2つの円を描いて続けた。

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「だから私は、自分が楽しいこと、自分にとって十分なお金が稼げること。2つの円の重なりが、進路選びの軸になると考えているの」

「楽しくてお金が稼げるって、なんか嘘みたいな話ね。そんなうまい話あるんですか?」

「僕もミクと同じことを思いました。それができたら苦労しないというか、そんな大人、見たことないというか......」

ミクとシンは、「言ってることはわかるが実際どうなの?」と言わんばかりに、ヒカリに言葉を浴びせた。

進路選びの軸が見つかる人の共通点

「たしかに、世の中の人みんなが、自分にあった進路を見つけられているとは思わない。だけど、楽しみながらお金を稼いでいる人は世の中にはたくさんいる。そして、そういう人にはある共通点があるの」

「共通点って何ですか?」

楽しみながらお金を稼いでいる人は、『社会でお金を稼ぐこと』と『自分の感情』に対する解像度が高いの。言い換えると、社会と自分をよく知っている、ということ。 2人は『解像度』という言葉を聞いて、何を思い浮かべる?」

「写真とか画像とかで、解像度が低いとボヤボヤして見えて、解像度が高いとクッキリ見える......みたいなやつでしょうか」

シンは自信なさげに答えた。

「その通り。言葉の意味は同じなんだけど、具体的にどういう状態のことかと言うと......。そうね。シンくんはどうしてマンガ家という仕事が成立するのか、マンガ家は誰からお金をもらっているのか、具体的に説明できる?」

「......そう言われると、説明できないですね。なんとなく、マンガが売れた分だけ収入が増える世界な気がしますが......」

「たとえ自分が気になる仕事でも、具体的に説明するってなると難しいよね。 と言うことは、世の中にはどんな仕事があって、どのようにお金を稼げるのか、ほとんど知らないんじゃないかな」

「そうですね......正直、1つもわかってない気がします。自分の両親がどんな仕事をしていて、どうやってお金を稼いでいるのかも、あまり知らないなって思いました」

「ある特定の仕事について、どのようにお金を稼げるかを具体的に知らない。世の中の仕事の種類や、お金の稼ぎ方のパターンを知らない。社会でお金を稼ぐことに対して、ぼんやりとしかイメージできていない。こういう状態を、社会でお金を稼ぐことに対する『解像度が低い』と呼ぶのよ」

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言われてみると、シンには社会に対してぼんやりとしたイメージしかない。

あれだけ好きで、なりたいと思っていたマンガ家も、絵の描き方や物語の考え方などはたくさん調べていてハッキリとイメージを持ってはいたものの、お金を稼ぐという文脈では、ぼんやりとしていることにシンは気がついた。

「それじゃあ、どんな時に自分が楽しいと感じるかを具体的に説明できると、自分の感情に対する解像度が高いってことですか? 自分のことなら、こっちは簡単そうですよね」

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ミクが自信ありげにヒカリに尋ねた。

「意外とそんなことないのよ。例えばそうね、ミクちゃんは何をしている時が楽しい?」

「私はおしゃれをしている時が楽しい! 自分の好きな服を着て街中を歩くのが好きです!」

「例えば、おしゃれをしているけど、誰もいない街中を歩くだと、どう?」

「誰もいない、ですか。うーん、ちょっと物足りないかもしれないですね。せっかくおしゃれしているから誰かに見てほしくないですか?」

「みんながそうとは限らないよ。私もおしゃれは好きだけど、自己満足できるというか、無人島でもおしゃれしたいって思うしね。逆に、人通りが多い街中とかだと、人の目が気になって無難な服しか選べないタイプなの」

「えー、そうなんですか!ヒカリさん、美人なのにもったいないですよ!」

「ありがとう、ちょっと照れるわね......。話を戻すと、『おしゃれをしている時が楽しい』という同じことを思っていても、なぜ楽しいのか?という理由は人によって違うことがあるの。さらに言えば、その理由を考えてみると、自分が楽しいと感じる別のことに気がつくことがある。例えばミクちゃんって、文化祭の発表とか舞台で何か発表するのって楽しいんじゃない?」

「はい!わりと好きなほうだと思います!」

「ミクちゃんの場合、おしゃれ自体が楽しいっていうのもあるけど、人前に立つとか、注目を集める、ということに対しても楽しいって感じるタイプなんじゃないかな。こう考えると、おしゃれ以外の切り口でも、楽しいって思えることは見つかると思うの」

「たしかに、そう言われると、他にもある気がしますね」

「自分が楽しいと感じることについて、どうしてそう感じるかの理由がわからない。楽しい、と感じることのパターンをあまり知らない。ぼんやりとしかイメージを持てていない......。こういう状態を、自分の感情に対する『解像度が低い』と呼ぶの」

「自分が楽しいと感じることすら、ぼんやりとしているなんて......。こう考えると、『悲しい』や『嬉しい』と感じることも、ぼんやりとしているなって思います......」

あっけにとられるシンとミクに対して、ヒカリが優しく言葉をかけた。

「大丈夫よ、社会と自分の解像度を高める方法はあるし、2人なら十分時間もある。 覚えておいてほしいのは、とにかく解像度を高めることが重要だということ。自分で意識しないと解像度は高まりにくいということ。そして、楽しみながらお金を稼いでいる人は、『社会でお金を稼ぐこと』と『自分の感情』に対する解像度が高いだからこそ2つの重なり、言い換えると、進路選びの軸を見つけやすい、ということよ」

 

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「ミクちゃんの場合、おしゃれ自体が楽しいっていうのもあるけど、人前に立つとか、注目を集める、ということに対しても楽しいって感じるタイプなんじゃないかな。こう考えると、おしゃれ以外の切り口でも、楽しいって思えることは見つかると思うの」

「たしかに、そう言われると、他にもある気がしますね」「自分が楽しいと感じることについて、どうしてそう感じるかの理由がわからない。楽しい、と感じることのパターンをあまり知らない。

進路選びの軸を見つける3ステップ

真剣な表情でノートをとるシンとミクを見ながら、ヒカリはホワイトボードに番号を振り始めた。

「進路選びの軸を見つけるには順番がある。まず最初に、社会でお金を稼ぐことに対する解像度を高めること。次に、自分の感情に対する解像度を高めること。最後に、2つの重なりを選ぶこと」

「どうして、最初が社会で、次が自分なんですか?」

 不思議そうな表情でシンがヒカリに尋ねる。

進路を選ぶという文脈においては、自分が楽しいと感じることを見つけるには、そもそも社会を知らないと見つかりにくいの。この間話した通り、人が何かをわかるには、知識の壁、行動の壁、理解の壁を乗り越える必要があったでしょう。もちろん自分が楽しいと感じることを見つけることは大切。ただ、知識不足や行動不足の状態、つまり、社会を知らなかったり体験していないことが多かったりすると、自分の感情を理解することが難しい。」

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「だから進路を選ぶという文脈においては、上の図のように、自分の解像度を高める前に、まず社会の解像度を高めるほうが進路選びの軸を見つけやすいの」

中学生・シンの不安

ヒカリがふと壁時計を見ると、時計の針は午前8時28分を示していた。

「あ、いけない!今日はいつもより早めに出ないといけないことを忘れてた!ちょうどキリもいいから今日はここまでね。申し訳ないんだけど、会議室の片付け、お願いしてもいい?」

「もちろん大丈夫ですよ」

ミクとシンが、二つ返事で引き受けた。

「本当にごめんね、ありがとう!じゃあ、また明日8時に、ここの会議室で。よろしくね!」

少しバタついた様子で、ヒカリは会議室を後にした。

ミクはデスクを片付けながら、初日の講義を終えた感想をシンに尋ねた。

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「シン、どうだった?ヒカリさんの話。私は将来の役に立ちそうで、これから楽しみだなって思ったけど」

「うん、そうだね......」

シンは浮かない表情で言葉を返した。

「どうした?なんか不満ありそうな感じじゃない?」

「いや。不満というか不安というか......。ヒカリさん、まずは社会でお金を稼ぐことに対する解像度を高めるって言ってただろ?働いてもないのに、そんなこと中学生の僕らにできるのかなって」

「よくわからないけど、明日の講義で聞いてみればいいんじゃない?私たちに教えてくれてるってことは、私たちにもできる方法があるのかもしれないし!シンは心配しすぎなんだよ」

明日からの講義が楽しみなミクと、不安が残るシン。

会議室を片付けて、2人は公民館を後にした。

お金を稼ぐ方法

自宅に帰ると、シンは心のモヤモヤを解決したくてスマホを開いた。とりあえず「お金を稼ぐ方法」でネット検索をしてみる。

「うーん。『誰でもお金を稼げる方法!』みたいな記事が多いけど、社会人向けで、書かれている内容の意味がよくわからないし、そもそも僕が知りたいことと違う気がする......。そうだ!自分が興味のあるマンガ家の場合はどうなのか調べてみよう」

シンは少しドキドキしながら、「マンガ家 お金を稼ぐ方法」と入力した。すると「マンガ家がマンガを描いてお金を稼ぐ方法」をまとめた記事を見つけた。

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「なるほど......ひとくちに『マンガ家』と言っても、お金の稼ぎ方は1つじゃないのか。マンガ家は実力主義の世界って聞くけど、実際問題、いくらぐらい稼げるんだろうか......」

「マンガ家 年収」で調べてみると、マンガ家の年収を詳しく紹介した記載を見つけた。

「うーん、TOPの売れてる人がすごすぎて、平均年収ってあんまり意味ないよな。要は、280万円くらいか、数千万円くらいか、ってことか。あ、でもこれって雑誌でお金をもらってマンガを描いて稼ぐパターンで、他のパターンだと違ったりするのかな」

いろいろ調べているうちに、1つの疑問が頭に浮かんだ。

「あれ?マンガ家って会社員とは違うのかな......?」

ネットサーフィンをしていると、ある文章を見つけた。

「マンガ家は会社員じゃなくて個人事業主?なのかな......。うーん、もう少し調べたら、いろいろわかりそうだから、後でまとめて調べてみよう。それにしても、少し調べるだけでこんなにいろいろわかるのに、なんで今まで調べなかったんだろうな......」

父親に自分の夢を伝えて反対された時、シンは何も調べることなく、ただ父親の言うことを鵜呑みにしていたことに気がついた。

これまで目の前の勉強には真剣に取り組んできたけれど、自分が本当に興味のあったマンガ家について、進路としては真剣に考えることがなかった。

シンは、このまま何も知らず、マンガ家の夢を諦めることはもったいないような気がしていた。

13歳からの進路相談 目次

クリックできる部分は、無料公開の対象です。気になる項目があれば、ぜひ他もお読みください。

【はじめに】

【プロローグ】「進路選び、どうしよう?」

【0日目】高校選び、大学入試、就職活動にも役立つ進路の考え方

【1日目】進路選びの軸を見つける3つのステップ

【2日目】ステップ1:社会でお金を稼ぐことに対する解像度を高める

【3日目】ステップ2:自分の感情に対する解像度を高める

【4日目】ステップ3:社会と自分の重なりを選ぶ

【5日目】進路選びの落とし穴をさける

【エピローグ】「どんな進路にも役立つ力」

【特別インタビュー】今を生きる君たちへ「もし私が、13歳なら」

書道家・3人の父親 武田双雲さんが贈る、13歳へのメッセージ「今感じている劣等感や短所は、ぜんぶ勘違いだから捨てていいよ」

YouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」の葉一さんが贈る、13歳へのメッセージ「夢は変わっていい、まずは始めることが大切」

元ミクシィCEO・起業家兼投資家の朝倉祐介さんが贈る、13歳へのメッセージ「失敗を想定するから、思いきり挑戦できる」

【おわりに】

13歳からの進路相談シリーズ 販売サイト

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イラスト©森永ピザ

この記事を書いた人

サイル学院中等部・高等部 学院長
松下 雅征/Matsushita Masayuki
サイル学院中等部・高等部 学院長

1993年生まれ。福岡県福岡市在住。一児の父。株式会社13歳からの進路相談 代表取締役社長。著書『13歳からの進路相談』シリーズは続々と重版され、全国の学校や市区町村の図書館で多数採用されている。
学生時代は早稲田実業学校高等部を首席で卒業し、米国へ留学。その後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値を基準に進路を選び後悔した経験をきっかけに、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げる。これまでに寄せられた中高生からの相談は10万件を超える。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社・才流(サイル)で勤務。
2022年に同社の子会社を設立し、代表取締役に就任。一人ひとりが自分に合った進路を選べる社会を目指し、「 サイル学院高等部(通信制)」を創立。全国から入学・転校生を受け入れ、高校卒業だけではなく、その先のキャリア支援も行っている。
著書:『 13歳からの進路相談(すばる舎)』、『 13歳からの進路相談 仕事・キャリア攻略編(すばる舎)