「学校に行きたくない」は甘えではない。親が取るべき行動を4段階で解説
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「子供が学校に行きたくないと言うのは甘えなのか」
「無理にでも学校に行かせたほうが良いのか」
このように悩んでいませんか。
「学校に行きたくない」というのは単なる甘えではなく、不登校の初期段階です。登校しぶりから不登校までの繋がりを俯瞰的に理解し、できるだけ適切に接してあげましょう。
進路相談のプロ
本記事では、学校に行きたくない子供に対し、親が取るべき行動を進路相談のプロ(書籍「13歳からの進路相談」著者)であり、通信制のサイル学院中等部・高等部 学院長の松下がお伝えします。 |
【学校に行きたくない子供を持つ保護者の方へ】
「学校に行きたくない」は甘えではない|原因は2種類
「学校に行きたくない」と子供から言われた時、「甘えではないか」と感じることもあるでしょう。
しかし、多くの場合「学校に行きたくない」という子供の訴えは「甘え」ではありません。不登校の初期段階と考えることができます。
まずは、子供が不登校になる原因を2種類に分けて解説します。
パーソナリティ要因(心理発達・家族関係など)
中学生や高校生は、パーソナリティ要因により、学校に行きたくないと感じることがあります。
熊本学園大学の研究(*1)によると、パーソナリティ要因には心理発達・家族関係が含まれます。
特に中高生は思春期による心理発達で不安定になり、学校に行きたくないと思う機会が増えます。
同研究では中学2年生のうち「学校に行くのが嫌になったことがある」と回答した生徒は70%にものぼります。
また家族関係と不登校の関係について、以下のような記載があります。
不登校の子どもの親子関係をみると、思春期に起きる親離れの動きが停滞していることが必ずといってよいほど見られます。(中略)思春期というのは、親離れが進み、友人関係が親との関係にもまして重要になってくる時期ですが、不登校状態においては、友人関係に入っていくことができず、親に頼り続ける状態が続いているわけです。(*2)
こういったパーソナリティ要因により、子供は「学校に行きたくない」と感じるようです。
*1 『学校教育構造と不登校問題 : 「なかま」による癒しと成長』熊本学園大学
*2 不登校について─友人関係と親子関係の視点から─ (公立学校共済組合 関東中央病院 精神科医 中 康)
学校環境の要因
学校環境によるストレスに対処できないことが不登校の一因となる場合もあります。
学校に行きたくないと感じる学校環境造の例
- 先生から評価されることを恐れる気持ちがあり自分を表現できない
- 時間割やクラスなどに自由な行動が制限される
- 用意されたカリキュラムに縛られ学びたいことができない
- クラスの仲間から受け入れられないことを恐れる
- 学力や偏差値が生徒の価値を表しているという考え方に縛られる
このような原因で、「学校に行きたくない」と感じていることを、子供自身が自覚できていない場合もあります。
そのため、親が根本的な問題を理解せずに、「学校に行きたくないのは甘えだ」と結論づけて、無理に学校に行かせようとすると、家族関係にも軋轢が生じてしまう可能性があります。
【学校に行きたくない子供を持つ保護者の方へ】
「学校に行きたくない」は甘えではなく、すでに不登校段階|親が取るべき行動とは
子供の「学校に行きたくない」という訴えは、単なる「甘え」ではなく、すでに不登校段階に差し掛かっているシグナルと考えるべきです。
不登校には4つの段階があり、それぞれの段階に応じて親が行うべきことは異なります。各段階を俯瞰的にとらえ、適切な接し方を考えてみましょう。
不登校準備段階
小児科医の資料(*1)によると、親にとっては、突然に感じられるとしても、「学校に行きたくない」という気持ちは子供の中で徐々に蓄積されているとされています。
このような時期を、不登校準備段階と呼びます。
この段階では、子供の抱えている葛藤に周囲の人が気づかない場合が多いです。葛藤は、身体症状に表れることもあります。
不登校準備段階を疑う症状の例
- 頭痛、吐き気、発熱、倦怠感、立ちくらみ など
学校に行く日の朝や前の晩には調子が悪くなり、休日など学校に行かなくて良い日には体調が良くなることもあり、周囲から見ると学校に行きたくないのが甘えのように見える可能性があります。
学校教育関連資料に以下のような文言があります。
一見普通の生徒に見えても,潜在的には激しいアグレッションをもつ場合がある。最近話題になっている「いきなり型非行」や「キレる子ども」はこうした生徒である。生徒の本当の内面を知るためには,生徒の「badな自己」への接近が必要なのである。(*2)
つまり、子供の「学校に行きたくない」は急な甘えでなく、これまで「goodな自分」を見せていた子供が限界となり「badな自分」を見せざるを得なくなったと考えられます。
このように考えれば「無理矢理でも登校させよう」という発想は子供に無理をさせていることが分かります。
この時期には、子供の様子に理解を示しつつ見守り、気持ちが整っている時に優しく背中を押すことで登校を促すのも効果的です。
*1 『ユースアドバイザー養成プログラム(改訂版)本編 第2節 若者の抱える問題(コンプレックスニーズを持つ若者の理解のために)』大分大学医学部附属病院小児科こどもメンタルクリニック 清田晃生
*2 『学校教育構造と不登校問題 : 「なかま」による癒しと成長』熊本学園大学
不登校開始段階
不登校開始段階では、子供は「学校に行きたくない」という気持ちを隠さずに表現するようになるため、家庭の中でも緊張が生じます。
時には、家庭内での暴力や暴言、いさかいにつながる可能性もあるでしょう。
このような時に、無理矢理学校に行くように指示したり「学校に行きたくないのは甘えだ」と叱りつけたりすると、家族関係にもマイナスの影響を与えることがあります。
その場合、不登校準備段階の要因は学校環境だとしても、不登校開始段階でパーソナリティ要因も発生し、子供にとっても親にとっても、より大きなストレスに繋がることがあります。
まずは、学校を休んで心身を休めることが大切です。頭ごなしに叱ったりせずに、子供が話したい時にはじっくり聞いてあげるようにしましょう。
引きこもり段階
引きこもり段階に入った子供は、学校にも行かなくなり、家の中にいることが多くなります。
この時期には、寝てばかりいたり、一日中ぼーっとしているように見えたりします。
子供が無意味な時間をすごしているように見えて、これからどうなるか心配になることもあるでしょう。
親にとってはつらい時期です。
しかし、この段階は、子供が心身のエネルギーを取り戻すために大切な時間でもあるため、親は焦らずに見守ることが必要です。
心理学者の河合隼雄氏は、成長を見守る大人に必要な態度を「全力で何もしない」と表現しています。
つまり、子供の状態をよく見て観察し、必要な時には最小限のサポートする態度が、不登校時期を乗り越えるために大切なのです。
社会との再開段階
引きこもり段階を経て、心身が十分に回復すると、子供は外の世界に関心を向け始めるようになります。
この時期を、社会との再開段階と呼びます。
心に余裕が出てくると、徐々に会話が増えたり、学校や進路のことを話題にしたりする場合もあるでしょう。
また、家にいることを退屈に感じたり、何かを始めたいという意欲が沸いてくるようになるのも、この段階の特徴。
焦らず、子供の自発性に応じてサポートすることで、自然に不登校状態から立ち直らせることができるのです。
【学校に行きたくない子供を持つ保護者の方へ】
学校に行きたくない子供を持つ保護者の方へ
「学校に行きたくない」という訴えは「甘え」ではありません。
不登校の4つの段階を踏まえると、「学校に行きたくない」と言い始めた不登校準備段階での対処の仕方が大切であることが分かります。
近年は不登校は良くても引きこもりは避けたい、と考える親も多いです。
しかし学校に行きたくない感情を甘えだと叱って、無理して登校させると引きこもり段階が長引くかもしれません。
各段階での子供の状況を知り、社会との再開段階までを想定して対応することが必要です。
すると、話し合いながら子供にとって行動しやすい方法を一緒に考えやすいでしょう。
一方で、学校に行きたくない感情はすぐに解消するわけではありません。特に、子供の特性と学校の環境が合っていない場合には、転校が解決策になる場合もあります。
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別室登校
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保健室登校
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フリースクール
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自由度の高い学校への転校
特に、子供の特性と学校の環境が合っていない場合には、転校が解決策になる場合もあります。
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【学校に行きたくない子供を持つ保護者の方へ】
この記事を書いた人
サイル学院中等部・高等部 学院長
1993年生まれ。1児の父。学生時代は早稲田実業学校高等部を首席卒業。米国留学後、早稲田大学政治経済学部を卒業。やりたいことではなく偏差値で進路を選び後悔した経験から、大学在学中に受験相談サービスを立ち上げ。中高生からの相談数は10万件以上。大学卒業後は教育系上場企業とコンサルティング会社の才流(サイル)で勤務。
2022年、同社の子会社として株式会社サイルビジネス学院を設立し、代表取締役に就任。一人ひとりが自分にあった進路を選べる社会を目指して「
サイル学院高等部(通信制)」を創立。2023年、同校の中等部を創立。著書「
13歳からの進路相談」(すばる舎)。進路選択をテーマにした講演・イベントの登壇実績多数。
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